多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経不順や不妊、ニキビなどの症状を引き起こす疾患で、ストレスがその発症や悪化に関与する可能性が指摘されています。
一方で、症状そのものが新たなストレスを生むという悪循環に陥ることも少なくありません。
この記事では、多嚢胞性卵巣症候群とストレスの相互関係を解説し、症状を管理するための治療法や、日常生活で取り入れられるストレス改善策について紹介します。
そもそも多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とはどんな病気?
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中で多くの卵胞が育つものの、成熟して排卵される卵胞が少なくなることで排卵障害が起きる疾患です。
超音波検査で卵巣を見ると、たくさんの未熟な卵胞がネックレスのように見える「多嚢胞性卵巣」が特徴的です。
生殖年齢にある女性の約5~8%にみられるとされ、決して珍しい病気ではありません。
月経不順や無月経、不妊症の原因となるほか、男性ホルモンの影響でニキビや多毛などの症状が現れることもあります。
月経不順や無月経などの主な症状
多嚢胞性卵巣症候群における最も一般的な症状は、排卵がスムーズに行われないことによる月経異常です。
具体的には、月経周期が39日以上と長くなる稀発月経や、3ヶ月以上月経が来ない続発性無月経が挙げられます。
人によっては、逆に月経周期が24日以内と短くなる頻発月経や、不正出血が続く場合もあります。
これらの症状は、卵胞がうまく成熟せずに排卵が起こりにくくなるために生じます。
排卵がなければ妊娠は成立しないため、月経不順は不妊の直接的な原因にもなり得ます。
長期間にわたって無月経の状態が続くと、子宮内膜への影響も懸念されるため、定期的な婦人科受診が推奨されます。
男性ホルモンの増加による体毛の増加やニキビ
多嚢胞性卵巣症候群では、血中の男性ホルモン(アンドロゲン)の値が高くなる傾向があります。
この高アンドロゲン血症が、身体に様々な変化を引き起こします。
代表的な症状は、治りにくいニキビで、特にあごやフェイスラインにできやすいのが特徴です。
また、体毛が濃くなる多毛の症状も現れやすく、口の周りや頬、胸、背中、太ももといった部位に男性のような硬い毛が生えることがあります。
その他にも、声が低くなる、髪の毛が薄くなる(男性型脱毛)、筋肉質になるといった変化が見られる場合もあります。
これらの外見的な変化は、患者にとって大きな精神的苦痛やコンプレックスにつながることが少なくありません。
ストレスが多嚢胞性卵巣症候群の発症や悪化につながる可能性
ストレスと多嚢胞性卵巣症候群の直接的な因果関係は完全には解明されていませんが、強いストレスがホルモンバランスを乱し、症状を悪化させる一因になると考えられています。
脳の視床下部はホルモン分泌をコントロールする司令塔ですが、ストレスを受けるとこの働きが乱れ、卵巣に指令を出す下垂体からのホルモン分泌に異常が生じます。
その結果、排卵が抑制されて月経不順が悪化する可能性があります。
また、ストレスは血糖値をコントロールするインスリンの働きを悪くする「インスリン抵抗性」を助長することもあり、PCOSの病態に深く関わっています。
多嚢胞性卵巣症候群の症状がさらなるストレスを引き起こすことも
多嚢胞性卵巣症候群が引き起こす様々な症状は、それ自体が新たなストレスの原因となり、悪循環を生むことがあります。
例えば、予測できない月経周期は日常生活の計画を立てにくくさせ、いつ月経が来るかという不安を常に抱えることになります。
また、将来の妊娠への懸念は大きな精神的負担となり得ます。
ニキビや多毛といった外見上の変化は、他人の目を気にする原因となり、自己肯定感の低下や対人関係への消極性につながることもあります。
このように、身体的な症状が精神的な健康にも影響を及ぼし、ストレスが増大することで、さらにホルモンバランスが乱れるという負の連鎖に陥りやすいのです。
PCOSの症状を悪化させないためのストレス改善策
多嚢胞性卵巣症候群の症状管理において、ストレスとうまく付き合っていくことは非常に重要です。
ストレスはホルモンバランスの乱れを助長し、症状を悪化させる可能性があるため、日常生活の中で意識的にストレスを軽減する工夫を取り入れることが求められます。
ストレスを完全になくすことは困難ですが、生活習慣を見直すことで、心身への負担を和らげることが可能です。
具体的には、自律神経のバランスを整える規則正しい生活、心身をリフレッシュさせる適度な運動、そしてホルモンバランスの安定に寄与する食生活などが挙げられます。
生活リズムを整えて自律神経のバランスを保つ
ストレスを管理し、ホルモンバランスを安定させるためには、規則正しい生活リズムを確立することが基本となります。
特に睡眠は重要で、慢性的な睡眠不足や不規則な就寝・起床時間は、自律神経の乱れを引き起こします。
自律神経はホルモンの分泌をコントロールする脳の視床下部と密接に関連しているため、そのバランスが崩れると月経周期の乱れにつながりかねません。
毎日できるだけ同じ時間に起き、同じ時間に寝ることを習慣づけ、質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
また、朝起きたら太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の自然な眠りにつながります。
就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、脳を覚醒させるため控えることが賢明です。
適度な運動で心身をリフレッシュする
適度な運動は、ストレス解消に効果的なだけでなく、多嚢胞性卵巣症候群の症状改善にも役立ちます。
ウォーキング、ジョギング、ヨガ、水泳といった有酸素運動は、気分転換を促し、心身をリフレッシュさせる効果があります。
運動によって血行が促進されると、全身の細胞に酸素や栄養素が行き渡りやすくなり、ホルモンバランスの調整にも良い影響を与えると考えられています。
また、PCOSの多くの患者に見られるインスリン抵抗性の改善にも、運動は有効です。
激しい運動を無理して行う必要はなく、自分が「心地よい」と感じる程度の運動を、週に数回、継続的に生活に取り入れることが推奨されます。
楽しみながら続けられる運動を見つけることが長続きの秘訣です。
バランスの取れた食事でホルモンバランスを整える
日々の食事内容も、ホルモンバランスと深く関わっています。
特に多嚢胞性卵巣症候群では、血糖値のコントロールが重要です。
血糖値が急激に上昇すると、それを下げるためにインスリンが過剰に分泌され、男性ホルモンの産生を刺激してしまうことがあります。
そのため、血糖値の上昇が緩やかな低GI食品を選ぶことが推奨されます。
具体的には、白米を玄米や雑穀米に、食パンを全粒粉パンに変えたり、食物繊維が豊富な野菜やきのこ、海藻類を積極的に食事に取り入れたりすると良いでしょう。
また、極端な食事制限や欠食はストレスの原因となり、かえってホルモンバランスを乱すため、1日3食、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を規則正しく摂ることが基本です。
多嚢胞性卵巣症候群の診断を受けるには?検査方法を解説
多嚢胞性卵巣症候群が疑われる場合、婦人科を受診して検査を受ける必要があります。
診断は、日本産科婦人科学会が定める3つの診断基準に基づいて行われます。
その基準とは、「①月経異常(無月経、稀発月経など)」「②超音波検査で確認される多嚢胞性卵巣」「③血中男性ホルモン高値、またはLH(黄体形成ホルモン)基礎値が高 く FSH(卵胞刺激ホルモン)基礎値が正常」です。
これら3つの項目をすべて満たした場合にPCOSと診断されます。
具体的な検査としては、まず問診で月経周期などを確認し、次に経腟超音波検査で卵巣の状態を観察します。
さらに、血液検査で各種ホルモンの値を測定し、総合的に判断します。
多嚢胞性卵巣症候群の基本的な治療法
多嚢胞性卵巣症候群の治療は、個々の症状やライフプランに応じて選択されます。
この疾患は体質的な要素が強く、病気そのものを完治させるというよりは、症状をコントロールし、長期的な健康リスクを管理することが治療の主な目的となります。
具体的な治療法は、将来的に妊娠を希望するかどうかによって大きく二つに分けられます。
生活習慣の改善はどちらの場合においても基本となり、その上で薬物療法などが検討されます。
自分自身の状況や希望を医師とよく相談し、最適な治療方針を決定していきます。
妊娠を希望する場合の治療法:排卵誘発
妊娠を希望している場合の治療では、排卵障害を改善し、定期的な排卵を促すことが目標となります。
まず初めに試みられるのは、クロミフェンやレトロゾールといった飲み薬を用いる排卵誘発法です。
これらの薬は脳に働きかけて、卵胞を育てるホルモンの分泌を促す作用があります。
内服薬で効果が見られない場合には、ゴナドトロピン製剤(hMGなど)を注射して直接卵巣を刺激し、排卵を誘発する方法に切り替えます。
この治療法は排卵率が高い一方で、複数の卵胞が同時に育ちやすく、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まるため、慎重な管理が必要です。
これらの方法でも妊娠に至らない場合は、体外受精などの生殖補助医療が次の選択肢となります。
妊娠を希望しない場合の治療法:ホルモン療法
現在、妊娠を希望していない場合の治療目的は、主に二つあります。
一つは、乱れた月経周期を整え、無月経が続くことによる子宮体がんのリスクを低減することです。
もう一つは、ニキビや多毛といった男性ホルモン過剰による症状を改善することです。
これらの目的のために、ホルモン剤を用いた治療が行われます。
一般的には、低用量経口避妊薬(ピル)や、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを配合した中用量ピル、黄体ホルモン単体の薬などが用いられます。
これらの薬を周期的に服用することで、定期的に消退出血(月経のような出血)を起こし、子宮内膜が過剰に厚くなるのを防ぎます。
また、ピルには男性ホルモンの作用を抑える効果もあるため、ニキビや多毛の改善が期待できます。
多嚢胞性卵巣症候群とストレスに関するQ&A
多嚢胞性卵巣症候群と診断されたり、その可能性を指摘されたりすると、多くの疑問や不安が浮かぶものです。
特に、症状の将来的な影響や、自力で改善できるのかといった点は、多くの人が気になるところでしょう。
ここでは、多嚢胞性卵巣症候群とストレスに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
症状との付き合い方や治療法への理解を深め、不安を和らげるための一助としてください。
症状を放置すると将来どんなリスクがありますか?
多嚢胞性卵巣症候群の症状を治療せずに放置すると、いくつかの長期的な健康リスクが高まる可能性があります。
最も懸念されるのは、子宮体がんのリスクです。
排卵が長期間ない状態が続くと、子宮内膜が黄体ホルモンの作用を受けずに、卵胞ホルモンによる刺激だけを受け続けることになり、子宮内膜が増殖しすぎてがん化しやすくなります。
また、PCOSの背景にはインスリン抵抗性が存在することが多く、将来的に2型糖尿病や脂質異常症、高血圧といった生活習慣病を発症するリスクも高まります。
もちろん、排卵障害は不妊の直接的な原因となるため、将来子どもを望む場合には早めに婦人科で相談することが重要です。
多嚢胞性卵巣症候群は自然に治癒することはありますか?
多嚢胞性卵巣症候群は、遺伝的要因や体質が関わっていると考えられており、風邪のように完全に「治癒する」という概念とは少し異なります。
しかし、症状の程度は生涯一定というわけではなく、生活習慣の改善や体重の変化によって大きく変動することがあります。
特に肥満を伴うPCOSの場合、適度な減量によってインスリン抵抗性が改善され、自然に排卵が回復し、月経周期が整うケースも少なくありません。
ただし、症状が軽快したからといって自己判断で通院をやめてしまうと、再び悪化したり、長期的なリスクを見逃したりする可能性もあります。
体質と上手く付き合っていくという視点で、定期的に医療機関で状態を確認することが望ましいです。
痩せることで症状は改善されるのでしょうか?
肥満を合併している多嚢胞性卵巣症候群の場合、減量は症状の改善に非常に有効な手段です。
体重を現在の5%程度減らすだけでも、インスリンの働きが良くなり、血中の男性ホルモン値が低下して、ホルモンバランスが整うことがわかっています。
これにより、乱れていた月経周期が改善したり、自然に排卵が起こるようになったりする可能性があります。
ただし、短期間での無理なダイエットは強いストレスとなり、かえってホルモンバランスを崩す原因になりかねません。
食事内容の見直しと適度な運動を組み合わせ、健康的で持続可能な方法で体重をコントロールしていくことが推奨されます。
まずは、間食を減らす、一駅分歩くなど、小さな目標から始めるのが良いでしょう。
PCOSの症状でお腹が張ったり出たりする原因は何ですか?
多嚢胞性卵巣症候群の直接的な症状として、常にお腹が張るということはありません。
しかし、いくつかの原因でお腹の張りや膨満感を感じることがあります。
一つは、PCOSでは多くの卵胞が同時に発育するため、排卵期近くになると卵巣が通常よりも大きく腫れ、下腹部に張りや違和感として感じられるケースです。
また、ホルモンバランスの乱れは腸の動きにも影響し、便秘になりやすくなることもお腹が張る原因となります。
特に注意が必要なのは、不妊治療で排卵誘発剤を使用している場合です。
薬の副作用で卵巣が過剰に刺激され、大きく腫れてお腹に水が溜まる「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」を発症すると、強いお腹の張りや痛み、急激な体重増加が見られます。
このような症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群は月経不順やニキビ不妊など女性の心身に多角的な影響を及ぼす疾患です。
ストレスはこの疾患の症状を悪化させる要因となり得る一方で症状そのものがストレス源となる悪循環も存在します。
治療法は妊娠を希望するかどうかで異なりホルモン療法や排卵誘発法が選択されますがいずれの場合も生活習慣の改善が症状のコントロールの基礎となります。
規則正しい生活バランスの取れた食事適度な運動はストレスを軽減しホルモンバランスを整える上で有効です。
PCOSの症状や将来への不安を一人で抱え込まず婦人科の専門医に相談し自身の状態に合った適切なアドバイスと治療を受けることが症状と上手く付き合っていくための第一歩となります。
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3.「100を超える発表」を行う研究活動
日本生殖医学会などで100を超える学会発表を行い、常に最新のエビデンスを治療に反映。PCOSとストレスの関係についても科学的根拠を重視し、再現性のある不妊治療を提供し続けています。









